本ページで紹介している型番CJで始まる製品は旧スプリアス規格で認可の無線装置のため、2022年12月1日以降は運用することができなくなります(
総務省告知)。
少し前のシャープのアナログコードレス。2000年代に入ると、どの機種にも大体同じ形の子機が付属し、その機種専用の増設子機というものはなくなりました。電話機もファクシミリも全てCJ-KS系の増設子機で済ますようになりました。
そうなる前は各機種に専用子機というものが用意され、多くの機種に共通で使える子機としてCJ-KS系が用意されていました。例えば、CJ-V90CLにはCJ-KV90という子機が付属し、CJ-KV90は単品でもCJ-V90CLの増設子機として販売されていました。こうすると機種ごとに生産ロットが必要になって割高になるのか、CJ-KS系よりも専用子機の方が高価でした。
ここで、一つ疑問が生まれます。「共通増設子機なるものが販売されるということは、親機と子機の通信に使う信号は全機種共通なのではないだろうか?すなわち、専用子機も、対応外の機種に使えるのではないだろうか?」 実験してみることにしました。
仮説1
同時期に発売された機種は全機種同じ信号。形式的に子機が分かれているだけ。
仮説2
同時期に発売された機種で、基本機能を扱う信号は全機種共通。機種固有の機能は専用信号が用意されている。
仮説3
同時期に発売された機種は全機種同じ信号。親機の機能に子機が合わせている。
実験方法
何種類かシャープのコードレス電話機を用意して、それぞれの子機を別の機種に増設し、動作を確認する。
結果
親機セット型番 | 増設子機型番 | 子機公式対応 | 結果 |
CJ-M3 (1999?) | UX-KF3CL | UX-F3CL | 全動作OK。 |
CJ-KM8 | CJ-M8 | 全動作OK。 |
CJ-M8 (1998) | UX-KF3CL | UX-F3CL | 全動作OK。誰からコール使用可能。 |
CJ-KM3 | CJ-M3 | 発着信可能。子機誰からコールをONにすると着信不可。 |
CJ-M101 (1998) | CJ-KM8 | CJ-M8 | 全動作OK。機能ボタンで迷惑防止機能使用可能。 |
CJ-KM3 | CJ-M3 | 全動作OK。機能ボタンで迷惑防止機能使用可能。スピーカーホン使用可能。 |
UX-KF3CL | UX-F3CL | 全動作OK。ファクスボタンで迷惑防止機能使用可能。 |
UX-F5CL (2000) | CJ-KM8 | CJ-M8 | 発着信可能。増設登録は手動のみ。親→子電話帳転送はダメ。 |
CJ-V61CL (2000) | CJ-KM3 | CJ-M3 | 全動作OK。 |
CJ-KM8 | CJ-M8 | 全動作OK。 |
CJ-D3 (199X) | CJ-KM8 | CJ-M8 | 増設登録は成功するものの発着信不可。 |
CJ-KS3 | 共通増設子機 | 増設登録は成功するものの発着信不可。 |
(CJ-D3のみ旧世代です)
どうやら、増設登録の時に、増設子機に搭載された機能の使用可否を親機から取得するようです。例えば、電話帳転送が使えるCJ-KM8を電話帳転送機能の無いCJ-V61CLに増設すると、「デンワチョウテンソウ」の項目は表示されなくなります。また、ファクス受信と迷惑防止機能などの通話中の特殊機能は同じ信号で、ファクスボタンで迷惑防止機能が使える機種もありました。
上記の通り、今回調査した1997〜2000年の機種は基本的に互換性があることがわかります(この互換性のあるコードレス方式を便宜上タイプ3と表すこととしています。シャープ株式会社による正式な呼称ではないのでご注意下さい。)。
また、オンフック(受話専用)とスピーカーホン(送受交互)については、次の通りとなります。
付属子機スピーカーホン対応 | 増設子機表記 | 増設子機の実際の動作 | 組み合わせの例 |
○対応 | スピーカーホン | スピーカーホン | CJ-M101 + UX-KF3CL |
○対応 | オンフック | スピーカーホン | CJ-M101 + CJ-KM3 |
○対応 | オンフック | オンフック | CJ-M101 + CJ-KS3 |
×非対応 | スピーカーホン | オンフック | CJ-V61CL + CJ-KM8 |
×非対応 | オンフック | オンフック | CJ-V61CL + CJ-KM3 |
つまりは、「付属子機がスピーカーホン対応であって、増設子機が(オンフックと表記していても)スピーカーホン対応であれば、その子機でスピーカーホンが使用できる。付属子機がスピーカーホンに対応していなければ、無条件にスピーカーホンは使用不可」ということですね。
こうなってくると、あれほど何種類も「専用子機」を用意した理由がわからなくなります。機能上、CJ-KV71とCJ-KV75は何が違うのかわかりません。色違いだではありますが、色は色記号で分ければ良いですし(例:UX-KF1CLはグレーとシルバーが用意されていた)。後になって「共通増設子機」という発想にたどり着いたのでしょうか。パイオニアなどは、今でも専用子機を用意しています。パイオニアの子機互換性については、EV20しか持っていないので実験できませんが、いくつか頂いた情報によると、パイオニア機も同様に同世代の機種の子機は互換性があるようです(
確認済み機種)。